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田んぼのつくり方

ビオトープ田んぼのコンセプト

ビオトープの田んぼは、生きものファースト。収穫量を上げるための施肥や農薬散布などは一切行いません。
【稲作の営みの中で、人と生きものがどのように共生してきたかを学び、明らかにする】ことを基本コンセプトとしています。

 

田んぼをつくる仲間

ビオトープの田んぼは、種まきから田植え、草取りや収穫、脱穀まで、一連の稲作作業とそこで生きる生きもの観察を行う「田んぼクラブ」の皆さんと一緒に、稲作を行います。田んぼクラブに参加できるのは、さいたま市在住の小学生とその保護者です。毎年、40人弱の親子が参加しています。4月の説明会から11月の脱穀まで、全7回の活動に参加する意思があることが条件で、田んぼクラブの参加者募集は、毎年4月の市報で行います。詳しくは、4月市報をご覧ください。

田んぼクラブの年間スケジュール

田んぼクラブの年間スケジュールは、おおよそ以下の通りです。
※気候などの諸条件により、多少前後することがあります。

4月ごろ オリエンテーション
5月ごろ 種まき
6月ごろ 田植え
7月ごろ 田の草取り
9月ごろ 秋の田んぼの生きもの観察
10月ごろ 稲刈り
11月ごろ 脱穀・籾すり

 

耕作の方法

生きものファーストの田んぼづくりは、さまざまな試行錯誤を繰り返す中で、徐々にその方法を確立しています。これまでの様々な試みを経て、現在行っている耕作方法をいかにご紹介します。

農薬の不使用

ビオトープの田んぼは、様々な水草や昆虫、カエルや野鳥など、様々な生きもののすむ場所です。殺虫剤や除草剤などのいわゆる農薬は、一切使用しません。

肥料の不使用

ビオトープでは、水を循環しています。もし、肥料を与えた場合は栄養が過多の状態=富栄養化し、水質が急激に悪くなる恐れがあります。一方で、ビオトープには様々な水草や藻などの植物が世代交代を繰り返し、必要十分な有機質が得られていると考えられます。このため、田んぼには肥料を与えなくても稲が育つことができています。

6月田植え→10月収穫

近年、慣行農法では、9~10月の台風被害を避けることや、早く市場に出荷することで高値で販売することを目的に、全国的に稲作の時期が以前より早くなっています。場所にも寄りますが、さいたま市内の早いところでは、ゴールデンウィーク頃には植え始め、お盆過ぎには稲刈りが始まるほどです。

時期の「ズレ」は、稲作と共に生きてきた生きものにとって、少なからぬ影響があるものと考えます。そこで私たちの田んぼでは、昔ながらの時期に稲作を行うこととし、6月に田植えを、10月に稲刈りをして収穫することにしています。周囲の田んぼはこれよりも早く田植えと稲刈りを行いますが、昔ながらのリズムでの稲作が、ここを訪れる生きものにどのような影響があるか、検証していきます。

不耕起農法

ビオトープの田んぼでは、不耕起農法を採用しています。通常の田んぼでは、春に田起こしや代掻きなど、田んぼを耕し、これによってトロトロの稲作に適した土を作ります。一方で、不耕起農法では田んぼの土を一切耕しません。前年に稲刈りをした後、稲の株はそのまま田んぼの中に残ります。稲の細かく深く張った根はやがて分解され、その部分が空隙となります。これにより、土は軟らかい状態を保つため、翌年の田植えでもそのまま田植えができるほど軟らかい土のままでいることができます。

通年湛水

ビオトープの田んぼは、一年を通じて水を湛えたままにしています。一般的な現代の稲作では、夏前の時期に、稲がより深く根を張り十分に株を増やす=分蘖を促すために、一時的に水を抜く「中干し」を行います。水生昆虫の成虫の多くは翅を持っているために水がなくても空に飛び立つことができますが、幼虫や水生生物の中には水中でなければ生きていけない生きものも多くいます。このため、ビオトープの田んぼでは、多少の水位の上下はあるものの、稲刈り時も含めて年間を通じて水を貯めたままにする「通年湛水」を行っています。

古代米

現代の稲作は、以前に比べると田植えや収穫が1~2ヶ月早くなり、早いところではGW前に田植えをし、8月のお盆前には収穫が始まります。その理由は、新米を早く出荷することで米がより高価で取引されることや、秋の台風被害を避けることなどが主な目的です。しかし、生きものの視点からみると、田んぼに水がある時期がずれることは、種によってはクリティカルな影響があると考えられます。ビオトープの田んぼでは、6月に田植えを行い、10月に収穫する、昔ながらのリズムで稲作を行う中で、どのような生きものがそこで共生するかを調べています。そして、このリズムで無理なく稲作を行うことができる品種として、古代米を植えています。古代米にも数多くの品種がありますが、「晩成(奥手)」「もち米」「芒(のぎ)が短い」の条件を満たす品種を選定しています。なお、もち米品種を選んでいるのは、年末にかけてのイベントで鏡もちづくりをするためです。

セルトレイ

イネの苗を育てる際には、セルトレイを使用しています。通常の田植えでは、育苗箱にびっしりと生えた苗から数本を引きちぎり、田植えを行います。しかし、この方法では、本数がまちまちになったり、根を残して引きちぎられたり、植える深さが分かりづらい、などの問題から、植え直しになることがしばしばあります。これらの課題を解決するのが、セルトレイを用いた方法です。

セルトレイは、小さなポットを連結したような形をしている、苗を作るための容器です。これに土を入れ、各穴に種をまき、田んぼに苗床を作ります。セルトレイを使用することで、1)苗を多すぎず少なすぎず植えることができる、2)土毎植えるため植える際に指先への負担が少ない、3)土が一緒に付いているため植える深さがわかりやすい、といったメリットがあります。

 

田んぼの一年

coming soon.

 

なぜ「自然の水辺」ではなく「田んぼ」なのか?

日本の田んぼ(水田)を含む里山は、生きものの宝庫です。人里離れた山奥などにある、手つかずの原生自然と比べても、野生生物の種類や数は里山の方が多いと言われています。

日本の里山の基本は、田んぼです。米を作る人の営みと、生きものたちの生活がうまく組み合わさり、そこには、人と生きものの「共生」がありました。

自然環境は、未来に渡って同じ環境が続くと思われがちですが、「植生遷移」に見られるように、環境は長い時間をかけて変化していきます。里山の環境は、その「中途」にある環境のため、人が手を入れることによって、はじめて維持されます。

例えば、畑では、同じ作物を植え続けると、作物がうまく育たなくなる「連作障害」が発生します。
一方で、水を張った水田では連作障害が起こりません。

水田は、同じ環境がずっと続く、奇跡の環境なのかもしれません。

田んぼは、浅く広い水面です。日の光を受けて、水は温かく、春には多くの生きものが卵を産みます。
田植えが行われたあとは、稲が隠れ場所となり、天敵から守ってくれます。

桜環境センターの田んぼでは、生きものと人の「共生」のあゆみを検証し、その技術を広く社会に開いていくことを目的に運営しています。

無農薬・無肥料で機械を使わず、冬も水を湛える田んぼには、どんな生きものが来るでしょう。ビオトープと田んぼの成長を、見守っていただけると幸いです。